本ページでは摩周湖の月ごとのデータ公開や摩周湖のコラムについてのまとめページです。※2025年8月よりデータ取得開始。
2025年11月1日、摩周湖カムイテラスで最大瞬間風速39.9m/sを観測
“台風級の風”が示した大自然・摩周湖の気象状況**
11月1日10時、摩周湖カムイテラスに新たに設置した気象計が、最大瞬間風速39.9m/sを記録しました。
この数値は、気象庁の分類でも「非常に強い風」〜「猛烈な風」に相当し、一般には台風の暴風域に入るレベルの強さとされます。
風速40m/sに近い風とは、屋外では立っていることが難しく、看板や軽い物が飛ばされる危険があるほどのものです。建築現場では作業が停止になることも多く、日常の風とは明らかに別次元の強さです。
麓の弟子屈町のアメダスでも、日最大風速15.8m/sを記録しました。摩周湖周辺は標高も高いので、麓の町よりも強風を記録していたのではと考えられます。弟子屈から川湯へ抜ける国道でも倒木があったりなどかなり強風だった様子。今回の気象計導入により摩周湖の気象状態を把握できるようになりました!
今後はこうしたデータを活用し、施設の安全対策やお客様への情報提供をさらに充実させていく予定です。
今回の暴風では標高の高さや地形から、自然環境の厳しさや変化がよくわかる結果が出ていました。
風速○m/sは体感でどのくらい?摩周湖版シミュレーション
- 0~2m/s →無風~そよ風程度。木の葉が少し揺れる程度で、湖は鏡のように静か。摩周湖の雲海は2m/s以下で発生しやすいと考えられています。
- 3~5m/s → 歩いていて風を感じるが、まだ快適。4m/sを超えると湖面にさざ波が立ち始め、摩周ブルーの色が少し揺らぐ程度です。
- 10 m/s → 歩くときに身体を少し傾ける必要がある。摩周湖の体感温度は気温より10℃以上低く感じられることも。
- 15m/s → 展望デッキ上では立っているのがやっと。雪がある日は細かい氷粒が顔に当たり痛い。カメラ撮影はほぼ不可能、スマホも落としやすい危険域。
- 25m/s → 傘は完全に使えません。摩周湖では飛ばされた帽子や手袋がそのまま谷に消えることも…。体が大きく揺さぶられ、会話も聞き取りにくくなります。冬季は吹き溜まりが急激に成長し、
道路状況が一気に悪化するレベル。 - 35m/s → 体が持っていかれるレベル。スタッフも外作業を控えるレベルの暴風。
- 40m/s → 摩周湖では、冬季にこの規模の風が吹くと営業継続が可能かどうかの判断が必要なレベル。除雪が追いつかなければ道路が閉鎖される可能性も。外に出ると転倒・物の飛散などの危険が非常に高まります。
摩周湖では雨具、カッパなど販売しておりますので風が強い日や傘をお忘れの際はお気軽に店員までお申し付けくださいね^^
2025年8月、気象計を摩周湖に設置しました!
2025年8月22日、摩周湖に気象観測計を設置。これにより、気温・湿度・風向・風速などのデータを取得できるようになりました。今までは公開データがなかったため、摩周湖のお天気情報は弟子屈か川湯の情報を参考にしていましたが、これからは摩周湖のデータを取得できるようになります。この情報を使って雲海のメカニズムの解明など、いろいろな使い方ができるようになりそうです。
▼使用機器:ヴァイサラ(フィンランドから輸入)

月ごと平均データ(毎月更新中!)
※月平均値を記載中
| 年度 平均 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | |
| 気温月平均 | – | – | – | – | 16.1℃ | 15.4℃ | 6.3℃ | ||||||
| 湿度月平均 | – | – | – | – | 95.3% | 83.0% | 83.3% | ||||||
| 風速月平均 | – | – | – | – | 4.2m/s | 3.6m/s | 3.8m/s | ||||||
| 降水量月累計 | – | – | – | - | 1969mm | 5504mm | 9998mm |
▼月間データのダウンロードは下記より
雲海とは?そもそも雲海はなぜできるの?
雲海とは?
「雲海」とは、山などの高い場所から見下ろしたときに、一面に広がる雲が海のように見える現象のことです。雲の上に自分がいる状態ですね。
- 🌡 雲海ができる条件(ポイントは3つ)
① 放射冷却で地面が冷える
夜になると、地面が日中の熱を宇宙へ放出します。これを放射冷却といいます。
その結果、地面近くの空気が冷やされて温度が下がります。
② 湿った空気が冷えて「霧」になる
空気の温度が下がると、空気中の水蒸気が水滴になって「霧」が発生します。
特に湿度が高いときや、川・湖・湿地の近くでは霧ができやすいです。
(摩周湖や川湯温泉周辺もこの条件がよく揃っています。)
③ 霧が谷や低い場所にたまる
冷たい空気は重いので、谷や盆地、湖など低い場所にたまります。
その中に霧が充満すると、上から見るとまるで白い海のように見える——これが「雲海」です。摩周湖の場合は、カルデラの中に雲がたまっている状態です。
⛰ 雲海ができる典型的な流れ
- 夜、放射冷却で地面が冷える
- 湿った空気が冷えて霧になる
- 冷たい空気と霧が湖面にたまる
- 朝、上から見ると雲海が広がっている
🌅 よく見られるタイミング
- 晴れた風の弱い朝
- 夜に冷え込みが強いとき
- 前日に雨や霧があった翌朝(湿気が多い)
- 6月〜9月(昼夜の温度差が大きい季節)
早朝の摩周湖へ行って雲海を見てみよう!
摩周湖カムイテラスの屋上テラスは年中解放されています。ぜひ、弟子屈に滞在して早朝の雲海を狙ってみてくださいね!夜には星空スポットともなっているので眺めの滞在で弟子屈町での時間を存分に楽しんでください^^
▼24時間開放されている屋上テラス

▼早朝の摩周湖

▼冬の早朝には雲海は見られませんが、代わりに樹霜(じゅそう)と呼ばれる神秘的な景色を見ることができます。寒冷地でしか見ることのできない景色なのでぜひたくさんの方に見ていただきたいです!

見れたらラッキー!摩周湖の冬を彩る「樹霜」
—そのメカニズムと、なぜ道東は樹霜が出やすいのか—
冬の摩周湖を歩いていると、木の枝先が白く縁取られたように凍りつき、まるで細工を施したガラスのように輝く朝があります。この白い結晶の正体が「樹霜(じゅそう)」です。
雪とは違い、空気中の「白い息」がそのまま木に張りついたかのような繊細な現象で、摩周湖の冬を象徴する風景のひとつです。
●樹霜はどうやってできるのか
樹霜は、“過冷却の霧の粒” が木の枝にぶつかり、その瞬間に凍りつく現象です。
・摩周湖周辺のように冷え込みが強い
・空気中に細かい霧(着氷性の霧)が漂っている
・風が弱く、ゆっくり当たる
これら条件が重なると、枝先に霧の粒が次々と付着し、白い針や羽根のように成長していきます。
雪が降らなくても、湿った空気があればできるため、意外と身近に現れる自然の“芸術作品”です。
●樹霜と樹氷の違いは?
摩周湖周辺では「樹氷(じゅひょう)」と混同されることがありますが、実は別物です。
- 樹霜:霧が直接凍る。白く繊細で軽い。風が弱い日にできやすい。
- 樹氷:過冷却の水滴が衝突して凍る。厚く重く、風に向かって成長。強風が必要。
摩周湖に多いのは、気温が低く風が穏やかな時に現れる「樹霜」。
より繊細で、朝陽の角度で輝く姿は格別です。
❓摩周湖で樹霜がよく見られる理由
道東、特に摩周湖周辺は樹霜が発生しやすい条件が揃っています。
① 放射冷却が非常に強く、氷点下が当たり前
摩周湖の外輪山付近は、冬の朝には‐15℃以下になることも多く、霧が凍りやすい環境です。
② 霧が発生しやすい地形
摩周湖は「霧の摩周湖」と呼ばれるほど霧が多く、冬でも湖面から立ちのぼる湿気や気温差で薄い霧が発生します。
③ 風が弱まるタイミングがある
普段は風が強い場所ですが、夜〜早朝にかけて風が落ち着く瞬間があり、この静けさが樹霜を育てます。
この三つが揃うことで、摩周湖周辺では美しい樹霜が姿を現します。
✨樹霜を見られるのはいつ頃?
摩周湖では主に 1月下旬〜2月頃の早朝 に多く見られます。
特に――
- 前夜に湿気が高い
- 放射冷却でぐっと冷え込む
- 風が弱まる
- 晴れている
こうした条件が揃った日の朝、木々が白く縁取られた景色が期待できます。
⛄摩周湖の冬は「静かに現れる自然現象の宝庫」
強風や厳しい寒さで知られる摩周湖ですが、同時に、こうした繊細な自然現象が静かに生まれる場所でもあります。
樹霜はほんの数時間で溶けてしまうことも多く、「その時だけ」の特別な風景です。
冬に摩周湖を訪れる際は、ぜひ木の枝にも目を向けてみてください。
一夜の寒さが生んだ、自然の細工を見つけられるかもしれません。
摩周湖の謎*なぜ摩周湖はこんなにも青い? ― カムイが宿るカルデラ湖の成り立ち

「摩周ブルー」と呼ばれる深い青色の湖面。
訪れた人が必ず息をのむこの景色は、約3万〜1万年前にかけて起きた 大規模な火山活動の“結果” であることをご存じでしょうか。
■ 摩周湖は巨大火山の“空洞”にできた湖
摩周湖のもとになった摩周火山は、道東でも有数の成層火山。
火山学の文献では、摩周火山は次のようなプロセスで形成されたとされています。
- 約3.2万年前:超巨大噴火(摩周第1火砕流噴火)
→ 大量のマグマが噴出し、山体が一部崩れる。 - 約1.1万年前:摩周第3火砕流噴火
→ 現在のカルデラの形が確立。 - その後、雨水や雪解け水がゆっくりとたまり、今の摩周湖に。

『日本の火山百科』(草野ほか)や、地質調査総合センターの火山研究報告でも、摩周カルデラの形成は「北海道東部の火山史を語る上で重要な鍵」と紹介されています。
■ 世界屈指の透明度は“成り立ち”が生んだ奇跡
摩周湖は最大水深 212m。
湖底に流れ込む大きな川が存在しないため、外部の土砂がほとんど混入しません。
また、火山噴出物が由来の シリカ成分 が太陽光の青い波長だけを強く反射し、“摩周ブルー”と呼ばれる独特の深い青色を作り出しています。
透明度が 20〜30m に達したという観測記録は、世界の湖の中でもトップクラス。
研究文献では、バイカル湖(ロシア)やクレーター湖(アメリカ)と並ぶ “世界屈指の透明な湖” と評価されています。
■ 霧が多いのも、火山地形がつくる自然現象
摩周湖は「霧の摩周湖」と呼ばれるほど霧が多いことで有名です。
これはカルデラ特有の すり鉢状の地形 によって、外気が湖の冷気と混ざりやすく、
霧が発生しやすいという地理学的な理由があります。
文献『北海道の気候と地形』(北海道大学出版会)では、摩周湖周辺の霧の発生メカニズムは「地形性霧の代表例」と紹介されています。
■ 地質好きに人気の“カムイシュ島”の正体
湖に浮かぶ小さな島、カムイシュ島。
これは湖底火山の噴火でできた 溶岩ドーム の頭が湖面に出たものです。
実はまだ「成長中」の可能性があると言われ、地質学者の間では摩周湖火山の活動史を読み解く貴重な存在とされています。
■ 今も活動中? 摩周火山の現在
硫黄山(アトサヌプリ)と同じく、摩周火山も“火山としては活動期”。
気象庁によると、カルデラ内では微弱な火山性地震が観測されることもあり、摩周地域は“今も生きている火山帯”であることがわかります。
この地に立つ摩周湖カムイテラスから見える景色は、
「数万年の火山の営みが作り上げた地球の作品」なのです。
摩周湖・登山道で出会う植物ガイド(文献つき)
摩周湖カムイテラスから摩周岳は片道7.2kmの日帰りで行ける登山道。道沿いで出会える植物たちをまとめてみました!行く前にチェックしてみてくださいね^^
摩周湖の外輪山や摩周岳登山道では、火山性の痩せた土壌・寒冷な気候・強風などに適応した樹木・低木・草本・コケ類が観察できます。ここでは登山中に実際に目にすることが多い代表種を、観察ポイントとともに紹介します。
- ダケカンバ(Betula ermanii) — 「白い幹の生存者」
どこで見られるか:登山道中腹〜稜線の林帯。摩周岳外輪山周辺に多い。kawayu-eco-museum.com+1
見分けポイント:白〜銀色の滑らかな樹皮。葉は三角〜卵形で秋は黄葉。風雪に晒されると低く広がる個体形になることがある。
自然史メモ:火山性の痩せた土壌や寒冷条件に耐える樹種で、外輪山の開葉層を作る重要種。地域での衰退や変化を調べた研究もある(ダケカンバの生理生態に関する報告)。環境研究センター
2. エゾマツ(Picea jezoensis)・トドマツ(Abies sachalinensis) — 「亜寒帯の針葉樹」
どこで見られるか:登山口付近〜中腹の針広混交帯。カムイシュ島の古木群でも確認されている。環境研究センター+1
見分けポイント:エゾマツは尖った葉(針)が一方向に並ぶ、トドマツは葉が平たく表裏の区別がある。樹冠の形や葉の並び方で見分けられる。
自然史メモ:摩周カルデラ周辺の森林構造を形作る主要種で、外輪山の保水や雪害防止にも寄与している。環境省
3. クマイザサ(Sasa veitchii) — 「地表を覆う緑の海」
どこで見られるか:林床〜尾根周辺の開けた箇所。特に下層植生として広く分布。kawayu-eco-museum.com
見分けポイント:細長いササ葉が密に茂る。春先に倒伏する個体もあり、踏み分け道や休憩地付近で群落が目立つ。
自然史メモ:地表を覆って土壌流失を防ぎ、同時に他種の発芽を抑える性質があるため、植生組織に大きな影響を与える。摩周周辺でも優占する場所が多いと報告されている。kawayu-eco-museum.com
寒冷地では、ササ(クマイザサやチシマザサ)の背丈は冬の積雪深とおおよそ一致します。したがって、例えば夏にハイキングをしていて高さ1mのササが生えているのを見かけたら、その場所では冬に約1m、またはそれ以上の雪が積もると予想できます。これは、外気温が氷点下の時でも、雪中の温度は0℃前後に保たれるためです。比較的暖かい「雪の布団」の中では、ササの冬芽が枯れずに越冬できるのです。https://www.ffpri.go.jp/snap/2020/10-sasa.html
4. 高山草本(イワギキョウ、イワキンバイ、チシマセンブリ など) — 「岩場にしがみつく花たち」
どこで見られるか:頂上付近の岩場、稜線の草地。摩周岳山頂や西別岳縦走路の高標高相当の環境で見られる。kawayu-eco-museum.com+1
見分けポイント:イワギキョウはベル形の青紫花、イワキンバイは黄色い小花、チシマセンブリは小さな白紫の花をつける。岩の割れ目や乾いた礫地に点在する。
自然史メモ:摩周岳の頂上稜線は本州の亜高山帯と似た植物相を示す場所があり、特に乾燥・強風に耐える高山性種が優占する。kawayu-eco-museum.com
5. コケ類・地衣類 — 「霧に育まれる緑の絨毯」
どこで見られるか:樹幹・倒木・岩面、湿った谷筋や霧がよくかかる場所。展望台周辺の岩場や登山道わきに厚く生える。db.cger.nies.go.jp+1
見分けポイント:色や質感、付着の仕方で種類を推定。肉眼では地衣類の白っぽい斑や、コケのふかふかとした層が目立つ。
自然史メモ:摩周は霧が多く湿潤なためコケ・地衣類の多様性が高い。これらは微気候を作り、他の植物の発芽・成長に影響を与える重要な要素である。db.cger.nies.go.jp
6. 低木層のツツジ類・ハナヒリノキ・オニシモツケなど(低木)
どこで見られるか:5合目付近や稜線下の低木帯。カムイシュ島の調査でも低木層が報告されている。kawayu-eco-museum.com+1
見分けポイント:花の時期(初夏〜夏)にはピンクや白の花が目立つ。葉や花期で種名を当てやすい。
自然史メモ:低木は風や雪に耐える形質を持ち、土壌保護や微気候形成に寄与する。ハナヒリノキ等は標高の低い場所にも現れる点が観察上重要。kawayu-eco-museum.com
🌱観察のコツ(フィールドで役立つポイント)
- 季節:花を見るなら6月下旬〜8月がベスト。秋は黄葉が美しい(ダケカンバ等)。冬季は積雪で観察困難。kawayu-eco-museum.com
- 場所別の期待値:登山口〜中腹は針広混交林(樹木中心)、稜線〜山頂は高山草本や岩場植物が点在。展望台周辺はコケや低木が観察しやすい。環境省+1
- 保全マナー:阿寒摩周国立公園内は保護地域。指定された登山道から外れない、植物の採取や踏みつけをしないこと。特にカムイシュ島への上陸は極めて困難で保全上の制約がある。環境研究センター+1
❓なぜここで特有の植物相が成立するのか(生態学メモ)
摩周湖カルデラは火山性堆積物・急崖・霧多湿・寒冷な気候が複合し、「低温・痩せ土壌・強風」という厳しい環境選択圧が働きます。この結果、(1)耐寒・耐乾性・耐礫性を持つ種が残り、(2)コケやササが下層を覆って微気候を作り、(3)稜線部では高山種が岩の割れ目に生育する――という複雑な植生分布が生まれます。これらは国立公園の植生調査やCGER(NIES)の報告でも確認されています。環境研究センター+1
グリーンシーズンはぜひ弟子屈町で長めの滞在をして登山道へ行ってみてくださいね!カムイテラスからは見ることのできない角度での摩周湖や、間近で見る摩周岳は一見の価値ありですよ^^
皆さんのご来訪をお待ちしております!

